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明け方にブバネシュワールのバスステーションに到着する。オートリキシャで駅前に向かう。高いけれど確かにそれなりに距離はある。駅の予約窓口はまだ閉まっていたのでまずは宿を探す。ここは州都でインド人向けの宿がほとんどで、値段も高い。駅前はビジネスマンも多いのか満室のところが多い。何軒も断られてようやく見つけた宿にやっとのことで飛び込む。ここも24時間制だ。 チェックインの前にホテルの近くの店の前を通りがかった時、二匹の子犬が何かを咥えているのを見た。なんだろうと思ってみてみるとずぶぬれになった子犬と同じ位の大きさの子犬の死体だった。可愛らしい子犬が死んだ子犬の腹に食いついて新鮮そうな内臓を引きずり出しては引っ張って遊んでいる。同じ大きさということは一緒に生まれた兄弟なのではないだろうか?無垢な表情をして二匹の子犬は死体にかじりつき続けていた。 一眠りして朝食をとり、帰りに同じ店の前を通るとまだ子犬達は死体を食べていた。頭がちょうど真っ二つになっていて、フレッシュなピンク色をした中身が覗いていた。熟しかけの柘榴を割った時のような、若々しくて新鮮な色だった。一匹が耳を引っ張り、もう一匹が後ろ足に食いついて引きずる。食べるもの、食べられるものが同じ犬の兄弟だった。 ブバネシュワールの駅前の大通りの、コンクリート張りの店の前に剥き出しの自然が放り出されていた。無邪気に、奔放に、吐き気を催すほどに。きっと二匹はあの死体からたくさん栄養を取って都市という厳しい環境での生存の機会を増やすことだろう。それは祝福だ。ここには罪はない。母猫だって死んだ子猫を食べて乳にするのだ。生きるものが生きるために。 一つの精子が卵子に辿り着くのに三億の仲間を必要とするように、一つの命が生きていくためには数多くの命を必要とする。死する命があってこその生なのだ。生者が一人自らの力によって生きているということはない。彼らは多くの屍の上にあって始めて生者たり得ているのだ。 それは、死や敗北すらもが大きな流れの中にあって我々を訪れているということだ。間違った結末ではなく、ありうべきものとして。自然な奔流として。
by djsinx
| 2010-01-28 12:28
| 旅の記録
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