老子がどこまで本当に流行っているのかは知らない。でもまあ、そういうことも
あり得るんじゃないのかなと日本のいろいろな話を聞いていると感じる。 もちろん仏教の禅を通じて日本人には老荘思想は無意識に馴染んでいるし、 それは無意識なだけに結構根深いものだ。井筒俊彦は言語アラヤ識という 概念を提唱しているが、もっと広範囲な文化アラヤ識とでも呼ぶべきものも 同時に存在して、ある種の集団を規定しているのではないかとも感じる。 それと同時に日本の現在の状況は老荘が流行るにはうってつけだ。未来に対する 希望が形作れない。既存の価値観が力を失い、コミットメントするだけの魅力を 既に持っていないのだ。お金?地位?それらが得難く失い易い幻想であり、 それを追い求め、守り抜くことにどれだけの価値があるのか判断ができなく なってきている。 大勢の人がまだそこにしがみついているのはそれに変わる価値観を何ら 持ち合わせていないからだ。沈みかけた船だろうと乗り移る船がなければ どこにも行けはしない。タイタニックの乗客との大きな違いは、我々は10分後に 氷山の流れる海に沈むのではないということ。助かる手段を探す時間がまだ あるということだ。今老子に惹かれる人々も何かを気づき、自分の進むべき道を 探し始めているのだろう。その入り口がエコや占いであったとしても。 何も探さずに今の社会の中で景気回復だぁ、消費拡大だぁと政府や企業や マスコミの言うことを疑いもせずに信じている人はきっとこの世界の外側に 出て行くのが怖いんだろう。自分の頭で考えて大勢と違う道を歩むという選択肢が 最初からないのかもしれない。だから古びた価値観に訳知り顔で埋もれて 疑いもしない。 休みもなくこき使われても解雇されても「大人ってそういうもんだ。」「社会は 厳しいんだ。」と自分自身を納得させて飲み込む。体か心が壊れてめちゃくちゃに なるまでは決して認めない。政府にとっても企業にとってもマスコミにとっても 扱いやすい家畜なんだよね、そういうやつらって。でも、彼らは自分たちのことを まじめな社会人の鑑だと信じて疑わない。 この記事の筆者は最後にいい問いを立てている。 「人間の真髄が変わらないとしたら、なんのためにこの何千年はあったのでしょうか」 人間の真髄は変わらない。老子のころから何も。戦争も貧困も悲劇も、 何一つなくなってはいない。多くの宗教家や思想家が様々な教えを説いたにも かかわらず。これからもきっとマイナーチェンジはあっても根源的な悲劇は 決してなくならない。 考え方が逆なのだ。何千年経っても変わらない人間の真髄(愚かさと言ってもいい)が 存在するからこそ老子なり仏陀なりキリストなりが愚かな人間のためにその教えを 説いたのだ。それは救いというよりも救うための試みと言った方がいいかもしれない。 多くの宗教が死後を想定するのは「この世界の外側」つまり「人間が人間であることを やめる場所」を作り上げる行為であり、変わらない人間に対し、そのエネルギーの 放出先を作り上げることなのだろう。 --以下引用-- 最近の「老子」人気を探ってみた | Excite エキサイト なんだか老子が好きだという20~30代の人が増えている。カシハラの周りだけなのか? と思って、ある書店の店員さんに伺ったところ、「過去の名言集や思想集を新しく書き換えた本が人気ですね。難解に書かれていた解説が簡略化され、思想が読みやすく、わかりやすくなった上に、文字も大きくなったので一般の人でも読みやすくもなった」というお言葉が。 でもなんで今さら老子? 授業で習ったようなものがなぜ復活? なんだかモヤモヤしてきたので、周りの新しい老子ファンに、直接なんで好きなのかを聞いてみた。 すると新しいファンには2つの種類があるがことが判明!! 一方は、風水占い派。有名な中国の富豪が老子をもとにした風水を広めていて、そこから老子を読むようになったというグループ。どちらかというと占いのような感覚で老子を読み始めたそう。宇宙と人生の根源的な不滅の真理を、老子の本でも説いていることから、その真髄を知るために老子ファンになったのだとか。好きなものは探求するファンならはですねぇ。 もう一方は、節約エコ派。老子が言っている「足るを知る」という思想が、節約やエコにつながるんだそうです。文化人類学者でもあり、環境啓蒙家の辻信一さんの『スローライフのために「しないこと」』という本の中にも、老子の思想がスローライフやエコに通じると書かれているのだとか。 いやぁ、紀元前から言われていたことを今さらのように新しく感じるのも時代なのでしょうか。「いろいろな教えやマニュアルを教える本が増えすぎていて、みんな同じに見えてしまう。それを上回るものをみんな探していて原点に戻って、行き着いたのが中国の思想家なのではないか?」というファンの声も。 それにしても人間の真髄が変わらないとしたら、なんのためにこの何千年はあったのでしょうかねぇ~。なんとなくむなしい気分に……う~ん。 (カシハラ@姐御)
by djsinx
| 2010-03-01 16:52
| News
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