カテゴリ:Partyの記録( 69 )

「京都のクラブシーンを考えるつどい」で話されたこと、考えたこと

2月2日の夜、21:00。この冬ぶっちぎりの寒波に舞い散る雪の元、木屋町のFAILY LABには大勢のクラブ経営者、関係者、アーティスト、クラブファンたちが詰めかけていた。数日前にTwitter経由で拡散、告知された「京都のクラブシーンを考えるつどい」がこのイベントスペースで開催されるのだ。

私が入った時は開始5分前程度だったけれど、前半分は既に埋まっていた。さすがに知らない人ばかりなので後ろの方に座っていたが、次々と人が入ってきては座る。横には報道陣も待機している。

京都市長候補の中村和雄氏が自身のBlogで「若者文化」を争点として挙げ、「時代遅れの風営法を変えていこう」と発言したことにより、この話題には関心が集まっている。京都市民ではないクラブシーンに関わる人々からの注目も高いと感じている。

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前半はつどいの主催者側や京都のクラブの関係者たちからの現状報告や意見表明の時間だった。WORLD閉鎖のインパクトが大きかったけれど、やはり木屋町周辺を中心に、取り締まりや指導は厳しくなっているという。スペースのDJイベントとしての使用の自粛を求められたり、音楽を聴きながら飲んでいる時に肩が揺れているだけでアウトだったりと、かなり締め付けは激しい。

取り締まりが厳しい理由としては、ドラッグの問題、喧嘩の発生、住民苦情、暴力団との関係の疑惑などが紹介されていた。これは京都だけに限った話ではないが、これまでのそうした積み重ねの歴史があり、「非行の温床」になっているというレッテルが警察によってべったりと貼られているのが現状である。


これに対してクラブシーン側の主張の根幹にあるのは、「どうして踊るのが悪いんだ?」というシンプルにして根源的な疑問だ。コンビニも映画館もカラオケも居酒屋も朝まで営業しているところなんていくらでもある。なのになぜ「踊る」という行為がこんなにも制限されなければならないのだ、というところだ。

ダンスは人類に共通の本能であり文化であるはずで、日本にも阿波おどりやよさこい節を始め、数々のダンスの伝統が存在する。それに幼稚園や学校ではダンスをする時間があり、大学にもダンスサークルなんていくらでもある。それなのになぜ、「クラブで踊るということ」がそんなにいけないのか。

若い人々が集まる場所として、遊ぶ場所として、そしてそこでの出会いや遊びから生まれる文化の発信源として、自分たちの愛するクラブシーンを守りたい、という強烈なパッションを感じた。京都には独自の、非常に面白い音楽やアートのシーンがあって、それは日本のみならず世界に向けて発信することも十分にできるものだと個人的には思っている。当事者たちがそういった思いをこうした政治的と言える場に集まって熱く語る、というのは本当に貴重な機会だ。

そうした話の中で、「自助努力をすべきである」「街の声に耳を傾けねば」という意見が複数の発言者の中から出てきたが、これは非常に大切なことだ。警察が問題としているドラッグ、喧嘩、住民苦情など、クラブに関わる人間がどうにか変えていける部分というのは実は結構ある。経営者、従業員、アーティスト、ファン、誰でもだ。ドラッグや喧嘩をやらない、見たら止めるとういうのもひとつ。クラブの外で溜まって大声で騒いだり、ゴミを散らしたりはしない、させない。木屋町のクラブで組合を作るという案などはとてもよいと思う。全国に先駆けてどんどんやっていけばいい。

正直東京では、その辺りのクラブ関係者の自制は(少なくとも私がいた頃は)結構しっかりしているように思える。クラブ出てたむろってるとすぐに散ってくれと言われたり、人を威嚇するような服装の人は入場お断りとか。より人が多くて密集しているからかもしれないが、その辺りの厳しさもあって関西のような状況になっていないという面もあるのではないかと推測する。ただの警察の管轄が違えば方針も変わるからと言われればそうかもしれないが。


そして中村和雄弁護士が登場。中村氏は現在のクラブシーンには間接的にしか関わっていないが、ビートルズ来日後の雰囲気の中で青春時代を過ごしていたという。そこにはビートルズを真似する長髪の若者たちがいて、フォークがあり、ディスコが生まれていた。要するに、我々の大先輩なのだ。

当時長髪の若者は不良だと言われていたが、彼らの真似したがったビートルズは今や学校の教科書にすら載っている。時代が変われば文化も、それらへの評価も変わる。その時の大人の都合だけで文化自体を潰すようなことをしてはいけないと氏は語った。

当時から、円山公会堂などを使ってコンサートも行われていたけれど、10人、15人が入れるような小さな店があちこちにあり、そういうところから生まれて育ったアーティストが大きなところに出て行って日本中に羽ばたいていった。だからこそ、豪華な施設だけが鎮座しているような街にはしたくない、という。

クラブで問題が発生しているのであればそれを解決していけばいい。ドラッグや喧嘩があるならそれを止めればいいし、苦情には対応すればいい。そういうものがありがちだからといってクラブ自体を潰すようなことをするのはおかしい。それはどこかの区で犯罪が多かったから区まるごと立入禁止にするようなものだ、と。

そして我々、クラブに関わる人間にできることは、何と言っても「声を上げる」ことだという。多くの仲間を作り、賛同者を募り、そして社会に向けて発信していく。言ってもしょうがない、どうせ変わらないと思っていて放置しても状況は決して勝手に良くはならない。難しくても、道のりが長くても、諦めたらもちろんそれで終わりだ。

シーンの中だけで閉じず、外に対しても広くアピールしながら協力者、賛同者を増やしていく必要がある。その過程で国会議員も仲間にし、国会での法律の改正を目指す。これは市長が勝手に変えられる話ではないのだ。その中ではとにかく人が必要になる。シーンの内外の多くの人々によりクラブシーンを理解してもらい、法改正への理解を深め、ムーブメントを起こさなければならない。それが一定以上の数になってくれば国会議員も無視はできない。彼らは有権者なのだ。


その後の質疑応答は会場を借りている22:30ギリギリまで続いた。闊達な議論がかわされ、どうしても一言言いたい参加者からの熱いメッセージもあった。その中で印象的だったのは、「クラブシーンを守ってくださいと他人に頼むんじゃない、自分たちが自分たちのシーンを守り、育てなければいけないんだ」という言葉だ。他力本願で誰かが解決してくれるようお願いして待つだけでいいわけがない。それでは口を開けてテレビをずっと眺めているのと大して変わらない。

自分たちがシーンを作っているんだと自覚して行動すること。ただ、誰かがやっているイベントやらパーティやらに遊びに行くだけではなく、ひとりの参加者としてそのシーンにいること。やっていることは一見同じでも全然違うことだ。180度真逆と言ってもいい。

そして、法改正へのアクションを起こして動くのと同時に、できること、やらなければいけないことは、現在クラブで起こっているとされている諸問題のうち、自分たちで改善、抑制できるところはしっかりとやることだ。ドラッグ持ち込まない、喧嘩は止めるとか、クラブの外でたむろって騒がない、ゴミや吸殻をポイ捨てしない、そういうところからひとつずつ意識を高めて行動を変えていくべきだと私は考える。

もちろんクラブはお酒も入っていい音楽の流れる場所だ。多少ハメを外したって構わないと思う。飲み過ぎでぶっ潰れたっていい。ただ、法を破ったり、人を傷つけたり、周りの住民の生活をかき乱したりするようなことはしてはならない。それはクラブであろうとクラブ以外の場所であろうと変わらない基本的な話だ。クラブでだけ許されるはずもない。そういう大外の超えてはならないラインをちゃんと意識することは絶対必要だ。

それができていなければ警察がやってきてがんじがらめの檻に入れようとする。でもそこを自分たちで意識して則とすればいい。そうやって自助努力を重ね、自治していくという背骨を持たなければ、いつかまた同じような理由で圧力がかかることになる。

昔と同じ状態に戻せるのか、戻せばそれでいいのかといえば、それはまた違う。時代は変わり、文化も変わっていく。我々は未来に向けて新しい形を作っていかなければならないと思っている。それこそが「クラブカルチャーの発展」と呼べるものだと私は信じている。

なお、会の主催者側と近しい人々の間で近々Facebookかなにかを使って風営法改正のページを作り、情報を共有していく場を設けるとの話があった。これはぜひやっていただきたい。この京都のシーンからなら本当に新しい動きを起こせると私は感じている。



最後に、投票日が目前に迫っている。京都市内のクラブや音楽を愛する人々に、できるだけ今何が起こっているかを知り、投票所に足を運んでいただきたいと思う。もしこの記事を読んで役に立ったと思ったら、ご自分の使っているSNSを使って京都市民の友人たちとの情報の共有、拡散をお願いできれば幸いです。
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by djsinX | 2012-02-03 14:22 | Partyの記録

獏原人村の満月祭2011 我々は長い浄化と再生の時代の一歩を踏み出す

獏原人村の満月祭に行ってきました。5月のGWに南相馬市からの帰りに獏に寄り、マサイさんと話をして今回の初日のオーガナイズの話をいただきました。ボリビアで一号機が吹っ飛んだ第一報を聞いてから、獏はどうなるんだろう、どうするんだろうとずっと気になっていました。だから満月祭をやる、初日のPartyもやると聞いた時、迷うことなく私は一緒にそれを作り上げたいと思い、お話を受けました。

放射能のことがあり、収まらない余震のこともあり、告知はするが誘わない、というスタンスを私は取り続けることに決めました。ブルーハーツの甲本ヒロトがかつて「チェルノブイリには行きたくねえ」と歌ったように、今回「フクシマには行きたくねえ」という人がいるのは最初から分かっていましたし、そうした人の判断や不安は尊重すべきだと考えました。福島県のどこで何が起こっているのかを自ら知り、リスクも分かった上で来ることに決断してくれた人だけが来てくれればいい、マサイさんの意見でもあり私の意見でもあります。

そして最終的に、思ってもいなかったほど多くのアーティストが出演を希望してくれました。初日はもちろんのこと、満月祭全体としてもです。みんなそれぞれに何かを感じ、考え、強い想いを持ち、そして行動に移していました。それらは時に言葉として語られ、時に沈黙の中に込められました。もちろんアーティストだけでなく、スタッフとして働いてくれた人、出店者の方々、そしてお客さんたち。飲んで、食べて、歌って、踊って、滞在の全てがそのままメッセージでした。

余りにも美しい真夏の獏原人村には、間違いなく放射能は降り注いでいて、ガイガーカウンターを持ってきている来場者も少なくありませんでした。それでもなおあの場所は美しい。見えないけれどそこにある放射能、その中でも青々と色付く木々、飛び交う鳥、変わらず凶悪なアブにブヨ、そして蝉時雨。日差しは暑く、水は甘く冷たく、月はこうこうと光っていました。私たちはここで何をすべきなのか、どうすればいいのか、獏原人村とその自然そのものが何よりも強いメッセージとして私たちの目前に顕現していました。

そして私たちが取った行動は、歌い、踊り、遊び、笑うことでした。ジェリー・ガルシアの言葉であり、転輪祭のテーマでもあった言葉、「Have a fun(楽しむことだ)」をこれほど切実な意味で実感したのは今回が初めてでした。大変で、苦しくて、先が見えない時こそ、笑顔とユーモアは必要なんです。苦しくて笑えない人が無理に笑う必要はない。笑える誰かが笑顔を見せてあげればいい。そうやって未来に向けて途切れさせずに続けていけばいい。いつか時間が傷を和らげて、笑える日が来る。そのために私たちは祭りを開き、被災地に支援に向かっているのでしょう。

土曜日の夜のセレモニーの時のマサイさんの言葉は涙が出ました。この地球と宇宙の生命力を信じ、新しい文明を築いていく。あの自然の中で、その力は信じられるものでした。時に暴力的で破壊的でありながらも、その暴力や破壊さえも呑み込んで絶えることなく生き抜いていく生き物たちの姿が獏原人村には在りました。私たちの生きる今だけでなく、未来に対する言葉でした。

太鼓が打ち鳴らされ、火を囲み再生の舞を舞った時、東の山から満月が昇りました。輪になって火の周りを踊りながら回るたびに月は少しずつ空へと昇ってゆきました。誰も意図したタイミングではありませんでした。ただ、宇宙の流れに私たちが乗り、噛み合い、物事が起こりました。これから生きていくうえで、何度でもあの場面を思い起こすことでしょう。長い長い新しい時代の一歩を踏み出したあの祭を。そしてそこに昇った月を。

また獏原人村には必ず戻ることになるでしょう。あの場にいたときにこれが最後だとはまったく感じなかったから。そして、あそこに戻れるような、そんな未来を描き、そこに向けて考え、動いていこうと決意しました。それには長い長い年月がかかるかもしれません。もしかしたら私は生きてその世界を見ることができないかもしれません。問題は多岐に渡ります。ただ単に放射能云々だけのことでは全くありません。人の生き方、人間存在の在り方までもがそこでは問われてくることになるでしょう。でも、それは考え抜かれるだけの必要と価値のある問題です。そして余りにもその問いを問いかけることを人間は怠り過ぎてしまった。

答えはもしかしたら出ないのかもしれない。でも私たちは問いかけることはできる。そして考えることも、行動することも。笑顔とユーモアを無くさず、楽しむことを忘れることなく、この世界で。

満月祭の様子

テントサイト 
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池とパラソル
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ステージ前のマーケットエリア
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フロア全景
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獏原人村の川 泳ぐことも飲むこともできる。冷たくて澄んでいる。
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オープニングセレモニー
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DomeのChillout Booth
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ステージ前の人々
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by djsinX | 2011-08-17 13:45 | Partyの記録

南仏のFree Party

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ヤニクの知り合いが近くの街で昼間のPartyをやるというのでちょっと行ってみようということになる。最近は絡んでいないんだけどね、というけれど同じエリアでやっている人達だ。まあ、楽しければそれも楽しんでしまえばいい。この日も昼を過ぎていたので途中で立ち寄ったパン屋にクロワッサンはない。またもや売切れである。

途中で山の頂上にあるきれいな村に立ち寄る。アジェンよりもさらに古風で美しい建物が並び、眼下に広がる景色も美しい。週末にもなるとドライブに立ち寄る人も多いという。

町に着き、公演の駐車場に車を止めて芝生の上を歩いて音のほうに向かう。公園の中の気持ちのいい場所にブースができて、音もいい感じで流れている。楽しんで遊んでいる人もいるし、普通に公演に散歩に来たり遊びに来たりした人も覗いて行ったりしている。いろいろなやり方はあるだろうけれど、いいPartyができるということが一番大切だと思う。せっかくPartyなのだから、自分のやりたいようにやればいいのだ。私は常にそうしてきたし、それが一番うまくいくと感じている。

家に帰ってフランス名物のコンフィをいただく。フランスらしい脂ののった複雑な味で美味しい。こういうところ、フランス料理はフランス人っぽいと感じる。イタリア料理とはどこか発想の根っこに違ったところがある。でも、食べたことのない美味しいものを食べるのは間違いなく幸せである。
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by djsinx | 2010-09-20 05:06 | Partyの記録

Utopiaからマドリードへ

830

朝の10時にマドリード行きのBoom Busが出るので朝一に支度をしてテントを撤収する。昨夜の夜中に音が止まっているのでみんな引き上げは早めだ。無理もない。初日から来ていたなら12日間という長丁場だったのだ。涼しい気候のおかげで体の疲れがないからか、歩く距離が短いのが分かっているからか足は軽い。バス乗り場には既に何台もバスが止まって乗客を待っている。リスボン行きとマドリード行きがあり、それぞれ並んだ順にバスに乗り込む。午後の5時にはマドリード空港に到着する。

名残惜しいというより感謝の気持ちでいっぱいだった。最後の最後までやり尽くしてくれた、そういって過言ではない。物足りないというのでも、お腹いっぱいというのでもない。自然と満ちるべく自分の中が満たされている感じなのだ。そしてそれはどこか他から来ているのではなくて、自分の中から溢れ出てくるものなのだ。

途中でサービスエリアで休憩し、昼食。スナックとパンを買い、ゆっくり食べる。マドリードでの宿も決めていない。シーズンも終わりに近いはずだし大丈夫だろうと高をくくっていたけれど少し心配でもある。

バスは快適にハイウェイを走り続け、もうちょっと休んでいたいと思っていたけれど予定をさほど遅れることもなく到着。Boom前に一夜を過ごしたカフェを横目に市内への地下鉄乗り場に向かう。カートを置いて思いバックパックを背負い地下鉄へ。辺りをつけていた駅までは乗換えがあるようだけれどとても入り組んでいてよく分からない。ひとまず環状線まで出て駅の地図を調べて何とか行き方を把握する。途中で携帯電話のSIMカードを買い換える。10ユーロで10ユーロ分の通話料がついているのでひとまずお得だ。

市内の地下鉄は空港からのものに比べてかなり混んでいる。荷物が大きいと一苦労だ。それでも何とか間違えずに乗り換えて目当ての駅に到着する。まだ夏だから日が高いのが救いだ。ガイドブックを頼りに宿を探すとなんとか空きのあるところが見つかる。ダブルで40ユーロと他の国に比べれば安いのでそこに決める。洗濯やら充電やらいろいろと文明の利器に用事があるし、長居する予定ではないのだ。

シャワーを浴びて近くのレストランで乾杯する。なにはともあれ、だ。料理もブルスケッタ方式で色々食べられて楽しい。久しぶりにテントではないベッドだ。早めに休む。
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by djsinx | 2010-08-31 03:26 | Partyの記録

本物のUtopia

829

Utopiaの間のことは正直筋道立てては覚えていない。着いた翌日からDance Stageで音が出始め、そこからはずっとフロアにいた。UtopiaはBoomとは違って山間の林の中が会場だった。今まで悩まされた灼熱の太陽から守られ、会場内には気持ちのいい泳げる池もあるのだ。シャワーも水場も目の前で、テントサイトもBarやレストランも歩いて5分かからない。全てがコンパクトで、完璧なロケーションだった。

時間は永遠になり、空間は無限になる。神話の世界が顕現して私たちはそこに参入する。過去や未来や他の場所が「今、ここ」になる。私たちを包んでいた膜が消え去り、私たちを縛っていた重しは解き放たれる。世界が輝いて、違った言葉を語り始める。そこで行われるのは聖なる遊びだ。自らの中に世界の流れを通し、それに身を任せ、波に乗る。世界の言葉を私たちは理解し、その言葉と一体になって戯れる。メーターが振り切れ、最後の重しを振り切ってばちんとスイッチが切り替わる。Boomの一週間の後、ここまで来てようやくそれが起こったのだ。そして一度切り替わったスイッチは、元には戻らない。切り替わった先の世界を知った後では知らなかったところには戻りようもない。

そうしてこのPartyは自分にとってとても特別なものになった。

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Utopiaにはシンヤ君とチハルちゃんも来ていて物売りをしていた。ヨーロッパのフェスではゲリラ的な出店はかなり自由で、いろいろなものを売っている。買い付けてきた服や小物、自作のアクセサリーからお菓子までカラフルに揃っている。そういうのを見るのも楽しみのひとつなのだ。一緒の場所に店を出していたのはスロヴェニアから来たシルキー、フランス人のスイッシュにタッキー。シンガポールでDJをしているアンドレア。そういう物売り仲間ができて次のフェスでも会って遊ぶ。普通に回っているのとはまた別の時間や繋がりが流れている。
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by djsinx | 2010-08-30 23:50 | Partyの記録

Utopia Festival へ

826

朝起きて撤収をする。スレン達はポルトガルのどこかのビーチで何泊かゆっくりしてからドイツに戻るという。ポルトガルの暑さはドイツ人の彼らにはちょっと大変だったようだけれど、後半からずいぶんノリノリで遊びまくっていて大満足だという。また是非一緒にBoomで遊ぼうと約束する。駐車場までの長い道のりを彼らが往復している間にこちらも撤収を済ませてBoom Busの発着所に向かう。乗り遅れたらどうなるか分からないのでなるべく早めに着こうとするけれど、まだ日が高くて、フル装備を背負っていると熱中症で倒れそうになる。もちろん自力で辿り着くしかないのでがんばって歩く。

予定の午後5時の30分前には到着したけれど、既に長い列ができていた。それでもバスもたくさん待っていて、片っ端から乗せては出発していく。我々は最後のバスだった。荷物を貨物室に放り込み、本当に久しぶりにエアコンの効いたバスの中に転がり込む。今までは暑ければ泳ぐ世界だったのが、冷房設備である。未来の乗り物にでも乗ったかのような気分だ。誰かが嬉しそうに

「I am going to UTOPIA!!!」

と叫んでいる。気持ちはとてもとてもよく分かる。乗り遅れそうになった人を拾って、ようやくバスは走り始める。Utopiaの会場は近くだと聞いていたけれど、山道を迂回しているのかハイウェイに入ったりと時間がかかる。暗くなるまでに到着するかと思っていたけれど、途中で買出しがしたいという人が多かったので途中の街のスーパーで止まる。ATMで現金を引き出す人から大量のビールや食料を買い込む人まで、準備に余念がない。

そこを過ぎるとまもなくバスは会場に到着。またいかつい警備員に無愛想にいろいろ聞かれながら中に入る。一番奥がテントサイトということで、到着するともう既にすごい数のテントが張り巡らされている。とりあえず林の中なので暑くて大変ということはなさそうだ。人は次々に到着しているのでめぼしい場所を見つけてさっさとテントを張る。こういうときはすばやく動くに限る。

この夜はAltanative Stageだけが動いている。テントを建て終わって遊びに行くとLisbon Alien Orchestraという不思議な名前のフィンランド人のArtistがLiveをしている。やはりフィンランド人だけあってかとても不思議な音を出す。フロアの近くのお座敷エリアでポートワインを試しながらゆっくり音を楽しむ。お酒が回って夜中過ぎにはテントに戻って糸が切れるように眠る。
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by djsinx | 2010-08-27 23:47 | Partyの記録

Boom Festival 最終日、しかし祭は続く

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これぞ本番というフルムーンの夜が終わってみんなの顔付きが少し変わった。もうすぐ終わるBoomを惜しく思っている人、After Boomに向かう気満々の人、誰にとっても今夜の夜中までのPartyだ。それでも肩の力が緩んで、全体の空気がふっと抜けた感じがする。何か巨大な渦を抜けてきたような、いろんなものがきれいに洗われて真っ白になったような、そんな気分だ。

お昼過ぎからMinilogueのLiveがあったのでGroovy Beachに聴きに行く。ここも人でいっぱいだ。降り注ぐ霧を頭から浴びながら踊る。暑くなれば近くのビーチに行って泳ぐ。疲れたら木陰に布を広げて一休みする。自由に動いてそれが何の問題もなく心地がいい。体や心の中にあった緊張が全部抜けきっていく。思い残すことはない。後は音が出ている限り好きなように楽しみ尽くすだけだ。

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結局夕方まで遊んでしまい、テントに戻って着替えるついでに一休みする。最後にSystem7のLiveもあるらしいのでせっかくだから行ってみることにする。その前のDimitri Nakovも懐かしい音。踊り収めだとフロアで遊んでいるけれど、時間になってもSystem7は始まらない。ずっとDimitriがプレイし続けている。音の感じも同じだし、そもそもSystem7は2人いるはずだ。見間違いはない。とりあえず1時間ほど踊って待っていたけれど現れないので撤収。

全力で満喫したBoomではあったが、我々にはAfter BoomであるUtopia Festivalが待っているのだ。ここまで1週間楽しみつくして大満足した後にさらに3泊のParty、いったいどうなってしまうのだろうという感じだが、ここまで来たら引いてなんていられるわけがない。突撃である。
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by djsinx | 2010-08-26 23:40 | Partyの記録

Boom Festival フルムーン

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今晩はフルムーンになる。Partyも今夜が最高潮だ。Dance TempleはSaikopodが昔の綴りのPsycopod名義でLiveをやる。BoomのGoa Tranceへのこだわりは熱い。それと同じ時間帯にSacred Fireでは20時から翌朝6時までの「All Night Ethno-Trance Jam Session」なるものがあり、オーストラリア人のWild MarmaladeやフランスのHilight Tribeも出演するという。超迷う。とりあえずPsycopodが始まるまではJam Sessionに行ってPsycopodが終わった時にその後のことを考えることにする。

Sacred Fireに行くとWild Marmaladeの音が聴こえてくる。あのディジュリドゥの音は忘れられない。フロアはもう人でいっぱいだ。2年前にニンビンで聞いたときよりもより野太く、そして疾走感が増している。それでいて緻密で繊細な音使いで飽きさせる瞬間がない。彼らのバンドの後に別のバンドが出てくるけれど、そこからがJam Sessionの本番だ。2つのバンドの音が絡まりあい、聞いたこともない音が飛び出してくる。その音を自由自在に操りながら音楽は進む。フロアは大興奮でうねりの中に飲み込まれる。

気がつくとPsycopodの時間が近づいてきたのでひとまずDance Templeに戻る。ここに戻るか、向こうで踊るかだ。フルムーンなのにおとなしく寝ているつもりなんて毛頭ない。

Dance Templeに戻るとシンヤ君とチハルちゃんに会う。いつも通りフロアの見渡せてスペースのある正面後方だ。辺り一面にファンクションワンがあるため、どこにいても音がいい。やがてPsycopodのLiveが始まるが、今夜はいつも以上に人でいっぱいだ。Liveは自分がDJを始めた頃に聴いていたまさにそのどツボの音だ。10年前のことが昨日のように蘇る。あの頃に10年後の自分なんてもちろん想像できていなかった。DJを続けていて、結婚もしていて、終わりも決めない長い旅に出て3年近くを過ぎたBoomのこのフロアで一周してこの場所に戻ってくるとは。永遠みたいに長く感じた10年がこうして巡った。この旅の間にいろいろなものが巡って一周した。もう一度その場所に立ち、そこから先に進む道がようやく感じ取れ始めてきた。これでよかったのだ、と素直に感じられる。

Liveは絶好調のうちに終わって一息ついてからまたDance Templeで踊り続ける。今夜はTranceだ。もう何も考えない。夜が更けてきてFrantic Noise vs MegalopsyのLiveからPhatmatixへの流れは非常によかった。GoaとSuomiの雰囲気を併せ持つ、曲げと変態のTranceだ。この夜にアゲだけでなくこういう曲げを持ってくる辺りのやり方は本当に遊び心がある。

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Phatmatixの最後の曲がかかる。不思議な声が『Eat Static』と唱え始める。そして銀狼のような風貌のEat Staticが現れる。夜は明け始めて踊っている人の顔が見え始める。フロアの外で空を見ながら踊っている人もいる。Liveがかなり激しかったので明るくなった空の下に出てしばらく踊る。沈んでいく満月が見える。

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もうエネルギーはすっからかんだ。途中でふらふらとテントに戻ると朝日の最初の一片が目に飛び込んでくる。朝まで踊ってしまった。月は東に日は西に、の逆である。スレンのPartyで久しぶりに徹夜で踊ったと思ったらここでもまただ。

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忘れていた何かの感覚が蘇ってくる気がした。日本のPartyで久しく感じなかったものだ。全てがキラキラと憧れに満ちた光を放っていて、どこを見てもどこにいて何をしていてもこれ以上ないほど満たされて心が楽しんでいる。一歩進むごとに見知らぬ素晴らしい何かが転がっているような予感。時間と空間が姿を変える。不思議の国、楽園、神話の世界、そうとしか言いようのない空気が満ちていて、世界の有様を変えてしまうのだ。
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by djsinx | 2010-08-25 23:30 | Partyの記録

Boom Festival 会場内探検

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目が覚めたのは日が高くなってからで、起きた理由はその暑さだ。相変わらず昼間の太陽は堪える。買ってあった桃をかじって朝食へ。ついでにセキュリティボックスにPCと貴重品を預ける。ヨーロッパの大きなフェスではどこでもそうだが、後半になると泥棒が出始める。EU内でも格差は歴然としてあり、マフィア等の大きなルートから個人レベルまで、どんな形にせよお金を欲しがっている人はいるのだ。それだけ人が行き来し、交わっているこのヨーロッパならではの事情とも言えるけれど、貴重品管理は旅の間どこででも最重要事項だったのでその場所に合わせて最善を尽くすだけである。

貴重品が手元にないと気が楽なのでそのまま泳ぎに行く。手近なビーチの空いているところに布を広げ、服を脱いで飛び込むだけだ。常時水着着用なので問題は無い。水から上がればあっという間に乾くし。人は大勢いるけれど、みんな同じこのBoomを楽しみに来ている人達だから面倒なことを気にせずに落ち着いていられる。水に入ってはビーチで甲羅干し。また気が向いたらいい音の流れるフロアに遊びに行って、暑くなればその近くで水に入る。パラダイスだ。もちろんゆっくりできるチャイ屋もある。

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夕方からスレンお勧めのSandmanのLiveに行く。この時間はまだまだ明るい。最初にインド古典楽器を使った短いLiveが入って人が集まりはじめ、Sandmanの時間だ。彼の音は、何と言うか、Goa TranceがPsychedelic Tranceと呼ばれ始め、色々なArtist達が様々な発想で音を作っていた時代のGoaの色彩を残すPsychedelic Tranceだった。自分が聞き始めた頃に好きなタイプの音だったし、それがまた新しく聞こえるのだ。こちらが10年分生きたからかもしれないし、音も10年分進化しているのかもしれない。いろいろな意味で。

彼の次はこれも懐かしいShiva Jorgだったけれど、SandmanのLiveが終わっても彼の姿が見えず、Sandmanが何やらDJのようなことをしているように見える。Hallucinogenがかかったりしていて、様子が分からない。Jorgは一目見れば分かる風体だけどどこにもいないしいつになっても出てくる気配がない。ドタキャンなのだろうか?SandmanのDJはLive程ではなかったので理由不明のままスレン達と一緒にフロアを離れる。まあ、Live終わった瞬間に突然今からDJやれと言われても無理なのは分かる。

Sacred Fireまで歩いて、せっかくだからとHealing Areaまで足を伸ばす。最初に行って以来こっちまでは来ていない。あちこちにブースがあり、ゆっくりした音がかかっていたりタントリックヨガのワークショップが開かれていて、性的オーガズムの大切さについて切々と語っている声が聞こえてくる。一番奥ではスウェットロッジが行われていた。Boom期間中毎晩やっているというのはすごいことだと思う。既にセッションは始まっていたので様子見だけして戻る。

その後はスレン達と別れてマーケットのあるZen Gardenとやらを散策する。いろんな場所でそれぞれにくつろいでいる人がいていい雰囲気だ。どこまで歩いても祭の中にいる。もう明日はフルムーンだ。天頂に眩く月が光っている。

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帰りにThe Dropという素敵な名前の総合アート施設に寄ってみる。ここはギャラリーがあり、ワークショップが行われ、シアターパフォーマンスを見ることもできる。やり過ぎだろ!って思うくらいすごいのだけど、どうせやり過ぎるなら思いっきり悪ノリしてやりたい放題やればいいのだ。BoomはWell Organized過ぎるっていうのはよく聞くけれど、これは個人的にはやりたい放題作り込みまくった結果だと思って好意的に見ている。

この時はDVJのAndroid Loveという人が映像と音を使ったLiveをやっていた。よく分からない不思議な映像からスターウォーズ、キル・ビルまで自分の音と映像を組み合わせてすごい世界を作っていた。VJとはまた違う方向性のLiveだ。昔クリス・カニンガムもこのスタイルでLiveをやっていたけれど、アレは酷かった。いい意味で。この人のLiveもそれに通じる発想があり、映像技術を存分に曲げに使っていてとてもよかった。
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by djsinx | 2010-08-24 23:24 | Partyの記録

Boom Festival 2年越しのHaltyaのLive

822

朝起きて無事にフロアにたどり着く。シンヤ君とチハルちゃんのカップルにフロアで会って一緒に踊る。Man with no nameのLiveがやがて始まるけれど、これがまたGoaなセットでいい。Artist達もこのPartyのコンセプトを分かっていて、Goaをやる人は間違いなくGoaで攻めてくる。

昼間のDance Templeは暑いかと思いきや、ちゃんと巨大なシェードが張り巡らされていて涼しくて気持ちがいい。日差しさえなければ空気は乾いているので蒸し暑さは感じない。しかも頭上に噴霧器のような細かいシャワーが設置されているので、その近くにいれば常に霧雨を浴びているようになりとても気持ちがいい。もちろん目の前はビーチで飛び込みたければ飛び込めばいい。水着を着ていなくても問題は無い。素っ裸になればいいだけだ。そんな男女が普通にビーチではくつろいでいる。

4人でビーチとフロアを往復しながら結局15時に音が止まるまで踊り倒してしまった。Man with no name以降の流れも非常に良かったし、何よりフロアとしても周りの人の感じも居心地がとてもよかったのだ。


この日は夜も楽しみだったのでフードエリアで腹ごしらえをする。ベジタリアンプレートのお店がおいしそうだったのでそこを選ぶ。日替わりのベジフードを何品かプレートに選ぶことが出来る。一つ一つの料理も美味しいし、コンビネーションもいい。マンゴージュースもあって、これが疲れには最適だ。フードエリアにはローカルの八百屋も出ていたので食後に桃を買う。3つで1ユーロとこういう場所では破格の安さだ。酸味と甘味が強くてリフレッシュさせてくれる。手軽なのでこのParty中は本当にいつもお世話になっていた。

一度テントに戻って夜用の身支度をする。深夜過ぎには間違いなく冷えてくるので半裸では持たないのだ。00ODのLiveにスレン達と一緒に遊びに行く。VuuVでも顔を合わせていた彼らのフランクフルトの友人たちとも合流する。22時だけどまだ黄昏時だ。立ち上がりに最適な感じ。後ろのフードエリアやマーケットでくつろいでいた人たちが音に誘われて楽しそうにフロアに集まってきて、今夜も踊り明かそうという人たちの空気が満ちる。このLiveは映像とコラボしていてそれも非常に楽しめる。

00ODがよかったのでその後の流れにも期待していたが、次に続いたFilteriaのLiveはちょっと物足りなかった。彼はBoomのパンフレットでもピックアップされており、Neo GoaTranceというジャンルに分類されていて、気になっていたのだ。でも実際はFull Onのビートと雰囲気にただGoa Tranceっぽい曲がった中音域の音を入れ込んでいるだけで、Goaの持っているある種の呪術性はどこかに消えてしまっていて、ダンスミュージックの域を出ていないように感じた。もっと魂の根っこのところから曲げてくれなきゃねぇ。。というのが正直なところで途中でフロアを離れて一休みした。

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個人的に本番は夜中過ぎからLiveのあるフィンランドのSuomi TranceのArtist、Haltyaである。2年前のオーストラリアのRainbow Serpentでは自分のChillout DJの時間と彼のLiveががっちり被ってしまって踊れなかったのだ。今こうして地球の反対側で全力で堪能できるのは幸運である。

Ambient Paradiseの近くの木陰でしばらく休み、時間を合わせてDance Templeに戻る。そろそろHaltyaのLiveだ。フロアの後方にいると、音が一度止まっていきなり変な音が流れ始める。非常に分かりやすくLiveが始まった。

始めはゆっくりと焦らしながら曲げていく。周りで踊っている人達が気がつくと変てこな踊りをし始めている。これこれ、この感じだ。派手ではないけれど気持ちよくずっと踊っていられる音だ。音に身を任せて揺れるように踊る。今日はこのノリで行くのかなと思い始めた30分後、ここからが本領発揮だった。

うっかりしていたらもうそこはWickedな音の万華鏡のど真ん中だった。四方八方から音がうねり合って、弾ける。そこに上から降ってきたかと思えば地面から生えてくる。フロアは巨大な渦になって濁流のように色彩が流れる。もう無茶苦茶である。こんなのをずっと待っていたのだ。縦横に飛び回って踊り狂う。Haltyaは最後の最後まで手を緩めることなく攻めきる。ど変態の阿鼻叫喚の嵐だ。

Liveが終わって大満足して、それ以上他の音で踊る気もせずにAmbientで一休みしてテントに戻る。
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by djsinx | 2010-08-23 23:17 | Partyの記録