人気ブログランキング | 話題のタグを見る

『高い砂丘』、エル・チェビへのキャメルサファリ

121

午後三時半に宿を出て砂丘に向かうことになる。今回は一泊二日で、メルズーガから近いエル・チェビというエリアだ。ここは「高い砂丘」という意味の場所で、丘のように高い砂丘が遠くからも見える。

ガイドはアリという宿にいる青年。ラクダは実は乗るのは大変で、体力を消耗すると聞いていたので昼過ぎまでゆっくり休む。荷物をスタッフルームに移動させて水とカメラと寝袋だけ持ってラクダへ。予備のブランケットをお願いしておいたらラクダの鞍の下に敷いてくれてこれはちょっとラッキー。

『高い砂丘』、エル・チェビへのキャメルサファリ_c0140612_3201595.jpg


ラクダは乗るのがまず難しい。足を折り曲げたラクダの背中にまたがり、アリが掛け声をかけるとガクンガクンと立ち上がる。スターウォーズの砂の惑星タトゥーインにいた四速歩行のあのマシンを思い浮かべるとぴったりあのまんま。どう考えてもあのマシンの乗組員は動く度に大怪我してるはずと確信。

『高い砂丘』、エル・チェビへのキャメルサファリ_c0140612_3241275.jpg


そして歩き始めるのだがこれもよく揺れる。未舗装道路を突っ走るインドのローカルバスよりは間違いなく揺れが激しい。鐙もないので力の入れ加減も難しく、今まで凝ったところのないような部分の筋肉が引きつり始める。一言で言うならお尻痛い。

でも痛みに気をとられているうちにアリに先導されたラクダは砂丘の中へ一歩ずつ踏み入れていく。土くれの荒野が思っていたよりも赤みを帯びたさらさらとした砂に変わり、砂丘の起伏が辺り一面を覆い始める。

『高い砂丘』、エル・チェビへのキャメルサファリ_c0140612_3261380.jpg


『高い砂丘』、エル・チェビへのキャメルサファリ_c0140612_3314296.jpg


1月中旬ということで4時近くなった砂漠はもう暑さはあまり感じない。ゆっくりと足跡の付いた道を歩く。恐らくはその道が歩きやすく、砂が崩れないのだろう。アリは

「ラクダは楽だ~」

と終始口癖のように呟きながらのんびりと歩いているように見えるけれどコース取りはおそらくかなり重要。実際に砂丘を下る時にはジェットコースターのようにいきなり身体が沈み込み、振り落とされないようにしないといけない。これは正直かなり骨だ。

『高い砂丘』、エル・チェビへのキャメルサファリ_c0140612_3393677.jpg


『高い砂丘』、エル・チェビへのキャメルサファリ_c0140612_3495572.jpg


2時間ほどして夕焼けが空を染める頃、大きな砂丘の下のキャンプ地に到着する。先に来ていた別の旅行者が夕日を見ている。ふらふらになりながらラクダを降りると踏みしめる砂は本当に細かく、柔らかい。一見しっかりしているように見えても足がずるずるとめり込む。トレッキングシューズをしっかり履いているはずなのにこれである。アリはパチ物のクロックスでこんなところを二時間以上歩いていたのかと思うとびっくりだ。

『高い砂丘』、エル・チェビへのキャメルサファリ_c0140612_356766.jpg


日が沈みかけてきたのでがんばって近くの砂丘に登る。もう、アスレチック感覚だ。砂場遊びといってもいい。息を切らせながら沈む太陽に逆らって砂丘を登っているといつか読んだ小説を思い出す。あれは誰の作品だったっけ。ポー?

『高い砂丘』、エル・チェビへのキャメルサファリ_c0140612_44916.jpg


『高い砂丘』、エル・チェビへのキャメルサファリ_c0140612_463585.jpg


ようやくいい場所を見つけてJunちゃんと夕日を見る。見下ろすエル・チェビの砂丘は本当に雄大。イメージしていたサハラが本当に目の前にある。月は十六夜だったので日が暮れるとともに辺りには満天の星空が広がり始める。

『高い砂丘』、エル・チェビへのキャメルサファリ_c0140612_4393665.jpg


『高い砂丘』、エル・チェビへのキャメルサファリ_c0140612_4415593.jpg


もう一人の旅行者、テキサスから来たイーサンと三人でクスクスとタジンの夕食を食べ、ゆっくりと星を見る。イーサンがiphoneの星座速見表ガジェットを持っていたのであれが何座でこれが木星でと満天の星を見ながら盛り上がる。

そしてやがて眩いばかりに輝く月が昇ってくる。星の光をかき消し、辺りの景色を青白く浮かび上がらせる丸い月。ラクダがその月明かりの下、砂の上で休んでいる。これぞなんというか、月の砂漠のなんとやらで、これ以上ないほどのロケーションである。辺りはしんと静まり返っている。聞こえるものといえば、ただ、ラクダたちがさっき食べた餌を延々と反芻し続ける咀嚼音、そして時折混じるげっぷだけである。それも、いつまでも終わらない。どれだけ食べてどれだけ反芻しているんだと突っ込みたくなるような、岩に染み入る蝉の声とはまた違った砂漠の夜の静けさであった。

『高い砂丘』、エル・チェビへのキャメルサファリ_c0140612_4503986.jpg

by djsinx | 2011-01-22 02:36 | 旅の記録
<< サハラの朝の光 フェズからメルズーガへ。アトラ... >>