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Prado Museum、怪しい職質に遭う

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世に名高いプラド美術館に行く。予備知識はほぼない。とりあえず気持ちをニュートラルにして印象をそのまま受け取ればいい。建物も大きくてきれいだ。特設展まで見る時間もなさそうなので常設展のチケットを買って中に入る。

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まず目玉は15世紀頃のものから始まる宗教絵画だ。キリストの昇天や受胎告知など、よく知られているモチーフが多い。個人的な目玉はボッスの「快楽の園」だ。いろいろな挿絵等で知っていたけれど、現物をじっくり見られるなんて滅多にあるものではない。実際には思っていたよりも小さめで、覗き込むようにしないとディティールまで見えない。もちろんちゃんと警備員が見張っているので超接近はできない。それにしてもこの絵を500年近く昔に描いているというのはすごいことだ。昔から人気だったようで、強奪同然にどこかの王様に献上させられたような逸話もあった。彼の他の作品は知らなかったけれど、同じように死とその先にあるものへの畏れと好奇心のようなものを感じる。「快楽の園」に通じるようなグロテスクな中にどこかユーモラスなものもあれば、もっと強い死の臭いを感じるものもある。どれも古臭さはない。今21世紀に生きている目を持っていても斬新さを随所に感じる。こういう人は天才と呼べるのかもしれない。

もちろんここはプラドであるから、そういう天才の作品が数多く集まっている。ボッティチェリやラファエロ等のルネサンス絵画から、スペインならエル・グレコ、ヴェラスケス、ムリリョ、そして大量のゴヤ。画集で見るのと現物をじっくり見るのでは全然違う。言葉では言い表せないけれど、それがそこに存在しているということで空気までもが変わるのだ。印象をいちいち書き表していたらきりがない程だ。じっくりと時間をかけて見ていたら4時間以上経ち、閉館間近に何とか一回りし終えた。

久しぶりな頭の使い方をしたのでお腹が減って近くで食事をして帰る。そうしたらトルコ系の旅行者に道を聞かれ、地図を一緒に見ていると怪しげな男が2人近寄ってきた。警察手帳を見せ、偽札のチェックをしているという。移民が偽札を持ち込んでマドリードでは大きな問題になっていると言う。私達が中国人とトルコ人に見えたのかもしれない。怪しいかなとも思ったけれど、実際マドリードのお店で買い物をすると10ユーロ札でさえマジックを使ったり専用の機械に通したりして偽札ではないかをチェックしている。小さな個人商店ですらそうなのだ。とりあえず言われたとおりパスポートを見せ、お札のチェックに応じる。抜き取られないかチェックしていたがその気配もない。面倒なのでごねると軽いチェックで終わりになる。とりあえずお札は一枚も減っていないのでよかったけれど、奇妙なものだった。偽者の警官かもしれないし、もしかしたら話しかけてきたトルコ系の彼こそ何か企んでいた可能性もある。知らない街には知らない事情がある。平和そうに見えたけれどそれだけでもないようだ。
by djsinx | 2010-09-02 03:36 | 旅の記録
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